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「なかなか子どもに恵まれず苦しい思いをしていた頃、田舎でのんびり過ごしたいと夫婦で話し合ってここに移住を決めました。その矢先に夫にガンが見つかって。最期をこの島で過ごすことになりました。カゲキを育て始めたのは夫が亡くなった後です。国王候補だからといって甘やかすことはしませんでした。まっすぐで良い子に育ってくれて誇らしいです」
「王になることはお母さんへの恩返しにもなる」とカゲキは言った。「俺のことを応援してくれる人たちもたくさんいる。皆の期待に応えたい」
カゲキの意志は強く、王に相応しい風格があった。
ドゥンさん曰く、島民の半数はカゲキが王になることを望んでいるという。家族三人で御斗田島に移住してきた女性はこう述べる。
「息子が本土の学校に馴染めなくて不登校だったんです。環境を変えたくて御斗田島に来ました。私も息子も不安で、しばらくは学校も通えなかったんですけど、たまたま近所に住んでいたカゲキさんがとても良くしてくれて。畑仕事をさせてもらったりしているうちに息子も笑顔が増えて、今では毎日楽しそうに学校に通っています」
役場に勤める男性は「王はカゲキ以外考えられない」と強く主張した。
「まっすぐな性格で周囲の信頼も厚い。何よりカゲキは国王と同じで純潔だ。彼が選ばれるに決まっている」
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