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もう六年も経ちますもんね、と呟きながらマイラはバスケットの中身を机に並べ始めた。
「そして私も……」
仲間たちの近況についてひと通り終えて続ける声には、隠しきれない喜びが滲んでいる。今日のために用意した「アレ」を取り出しながら、マイラは堂々と宣言した。
「今年で十八になりました! 勇者さまがここに来た時と同じ年齢ですね。……これで晴れて成人、今日は初めて飲むお酒で一緒に乾杯してもらえませんか?」
――きっと断られるだろうな、とそんな提案をしながらもマイラは内心でそう予想していた。
彼は、今まで一度も酒の誘いを受け入れたことがないのだ。
最初は「僕の故郷では、まだ酒が飲める年じゃないんだ」と断っていたが、それから何年経っても彼は酒を飲もうとしない。
おそらく故郷の決まりというにはただの口実で、本当は酒が嫌いなのだろう。
――しかし、そんな予想に反して。
「う〜ん……僕も飲んだことがないから、どこまで付き合えるかわからないけど……良いよ、せっかくの成人祝いだ。乾杯しよう」
リュートは迷いながらも、その提案に頷いたのだった。
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