1 六年目の星夜祭

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「っ、嬉しいです! 初心者でも美味しく飲めるとオススメの、甘くて美味しい蜂蜜(はちみつ)酒を持ってきましたので……おかずも、おつまみになりそうなものばかり揃えました!」  思いがけない返事に、抑えきれず声が飛び跳ねる。彼の気が変わらないうちにと急いで食卓の支度をととのえ、マイラはお酒の瓶へと手を伸ばした。  「僕にとっても……だし、ね」という彼の呟きが背中越しに聞こえる。しかし、思いがけない事態にはしゃいでいたマイラは、そんな独り言を特に気にせず支度を続けていた。  持ってきた瓶を傾けると、グラスの中でぽこぽこと小さな泡が立って琥珀色の水面が揺れる。  蜂蜜酒といっても香りはあまり蜂蜜らしくないんだな――そんなことを考えながら、マイラはグラスを掲げる。  宝石のように煌めく水面の向こうに、穏やかな笑みを浮かべたリュートが見える。  その幸福を噛み締めながら、マイラは高らかに声を上げた。 「それじゃ……乾杯!」
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