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マイラも、酔っていたのかもしれない。
気がつけば、普段なら言えないような大胆な言葉が口から飛び出していた。
「私は貴方が『勇者さま』だから好きなんじゃない。リュートが……リュートだから、好きなんだよ」
それを聞いて、リュートは「ああ」と、熱っぽいため息を吐き出す。
酔っぱらった彼の瞼は、眠気の前にもう陥落寸前であった。ずるずると眠りの淵を彷徨いながら、独り言のようにリュートは呟く。
「ありがとう。マイラ、好きだ……」
「~~~~っ!?!?!? リュ、リュート……っ!?」
突然の思い掛けない告白に、マイラの頭が一気に沸騰した。
バネ人形のように飛び跳ねて、椅子から立ち上がる。
しかし、既に夢の中に飛び立っていたリュートはもうマイラを見てはいなかった。朦朧とした譫言だけがその後に続く。
「置いていかないで……マイラ、僕を、置いていかないでくれ……」
「リュー、ト……?」
その目じりにひと筋の涙が光っているのが見えて、マイラは目を瞠った。
いつだってリュートは穏やかな笑みを浮かべていて、感情を剥き出しにするところなど一度も見せたことがなかった。そんな彼が唐突に吐露した本音が、今まで彼が押し隠してきた哀しみを露わにする。
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