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「……うん、大丈夫。私は何処にも行かない。ずっと、絶対、一緒に居るよ」
彼の傍に歩み寄って、右手をそっと包む。
彼女の囁きに、リュートは安心したようにその手を握り返した。
救いを求める彼の手は、縋りつくようにマイラの指を絡め捕っていく。
リュートの体温が、鼓動が直接マイラに伝わってくる。
まるで彼の心臓そのものを包んでいるかのような感覚。
繋がった二人の手は徐々にお互いの体温に溶け合い、一体となっていく。その感覚に安心したように、彼の寝息は徐々に穏やかなものへと変わっていく。
思い掛けない状況にしばらく硬直していたマイラは、やがて我に返ったようにふぅ、と大きな溜め息を吐き出した。
リュートの手を振りほどくこともできず、火照った頬を持て余しながらも努めて平静に彼女は思考を巡らせる。
――酔っぱらいの戯言? 揶揄われただけ?
……少しだけそんな可能性を考えてから、静かに首を振った。
ううん、そんなことはない。六年間彼と共にいたからこそ、わかる。
先ほどの彼の言葉は、紛れもない彼の本心だ。
――勇者さまは、ゼッタイ何かを隠している。
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