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――翌朝。
「マイラ、昨日はごめん! 僕、お酒全然ダメみたいだね。気づいたら寝ちゃってて……君に迷惑を掛けてなければ良いんだけど……」
顔の前で手を合わせて上下に動かすというのが、彼の故郷の謝罪スタイルらしい。
そんな独特の動きをしながら身を縮めて謝罪の言葉を述べるリュートに、マイラはすっきりとした笑みを向けた。
「全然? 気にしてないし、迷惑も掛かってないよ。客室、勝手に使わせてもらったから」
少しだけ言い淀んだけれど、何気ない調子でマイラはそのまま言葉を続ける。
「……おはよ、リュート」
彼の目が、驚きで見開かれた。
「その口調……ってか、名前……! 待って待って待って、僕、一体何を言ったの⁉︎ えっ、何があったの……⁉︎」
――面白いくらいの、動揺。
こみ上げてくる満足感と喜びに浸りながら、マイラは首を傾げた。
「特に、なにも? ……でも昨日は楽しかったよ、リュート。また遊びに来るね!」
「えぇえええ、説明なし……⁉︎ って、もう帰るのかよ……! あっ、こら、マイラ……!」
「じゃぁね〜」
制止する彼の声を無視して、片手を振って転移魔法陣を起動させる。
「えっ……転移、どうやって……⁉︎」
彼女の徹夜の成果に驚くリュートの声が響く。それを背に受けて、マイラは会心の笑みを浮かべたのであった……。
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