1 六年目の星夜祭

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「うん……やっぱり、会って良かった」  やがて転移が始まったのを確認してから、マイラはぽつりと呟いた。  初めて触れた、彼の本音。「何か」に対する隠し切れない不安。  その気持ちの根本的な原因はわからないけれど、それでも。 「好きって、言ってくれた……」  それを思い出すだけで、唇がニマニマと緩んでくる。  繊細な転移魔術を行使している最中だというのに、その辺を転がりまわってジタバタと悶えたい衝動に駆られる。  ――うん、大丈夫。リュートとの距離はちゃんと縮まっている。自分の気持ちは、一方通行なんかじゃなかった。  そんな喜ばしい結論に、マイラは力強く頷いた。  だから、彼が隠している苦悩を、秘密を打ち明けてくれるその日まで。  自分はただ、この恋を全力で走り続けていくだけで良い。
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