2 好奇心は魔導師を滅ぼす

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 ――「好奇心は身を滅ぼす」なんて、そんなの誰でも知ってる格言だ。  でも、欲と好奇心があったからこそ人類はここまで発展できた訳で。  マイラはどちらかというと、好奇心肯定派の人間であった。  きっかけは、ただの素材採集。研究の一環でドラゴンの鱗が必要になったマイラは、気軽な気持ちで旅へと繰り出した。  ……もちろん、その時点で常識外れなことに自覚はある。  幻獣であるドラゴンは人間界に現れることは滅多になく、そもそも出会うことすら不可能に近い存在だ。  でも、『賢者』の称号をほしいままにしているマイラにかかれば、それは大きな問題ではない。  幻想域の周期を計算してチョチョイと魔術を行使すれば、簡単に「向こう側」への道は繋がった。その後のドラゴンの発見までも、そのままスムーズに進んだのだが……そこで一緒に「ドラゴンの巣への入り口」まで発見してしまったのは、果たして幸運だったのかどうか。 (死にかけてる今ですら、その判断がつかないってんだから私も大概よね……)  ブレない自分自身に、苦笑が洩れる。  ――きっと今日一日をもう一度やり直したとしても、マイラはまた同じように「ドラゴンの巣」への侵入に挑戦することだろう。  なにしろ神秘生物(ドラゴン)の生態は謎に包まれていて、知りたいことは山ほどあるのだから。  その結果ドラゴンの怒りを買うことになり……巨大な爪を振り下ろされて、現状の瀕死の状態になったとしても。それでも自分の探求心に正直に従ったこの行動に、反省はすれど後悔はない。
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