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――まさか、魔力が全部消えちゃうなんて。
謎に包まれた幻獣の生態に、改めて驚嘆する。
巣に近寄る際には念入りな偽装魔術を施したのだが、完全に無意味であった。
なにしろ、ドラゴンの巣に近寄った途端、マイラの魔力は根こそぎ消え失せてしまったのだから。
からっからの、清々しいほどの魔力残量ゼロである。もしもの時のための魔力貯蔵用の魔石すら、石ころと化してしまった。
ドラゴンの巣の特殊効果……誰も知らなかった新たな発見に心は震えるけれど、それを伝えられる相手がどこにも居ないことだけが残念でならない。
魔力を失ってしまったら、そこに残るのはただの無力な人間でしかない。
血を流しすぎたマイラはもはや意識を保つこともできず、ゆっくりと目を閉じた。
せっかくのドラゴンの棲家、誰に伝えることができなくてももっと周囲の観察をしたいのに……悔しさを抱えながらも、押し寄せる眠気には勝てなくて。
この眠りに身を委ねたら二度と目が覚めないことを自覚しつつも、マイラは微睡みの中へ意識を手放す。
「マイラ!」
ずるずると引き摺られていく昏い眠りの淵で、最後にリュートの声が聞こえた気がした……。
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