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少し迷って、マイラはおずおずと自分の手をリュートの背に回す。
それを受けて、リュートの抱擁がさらに強くなった。それはまるで、腕の中にいるマイラが消えてしまわないか心配しているかのような力強さで。
(大丈夫、私は大丈夫だよ……)
そう伝えたかったけれど、声は出なかった。まだ回復しきってはいないのだろう。自分の身体が更なる休息を欲しているのがわかる。
温かなリュートの体温に包まれながら、マイラは静かに夢の中へ堕ちていく――。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
結局、マイラが言葉を交わせるほど回復したのは、それから十日ほど経ってのことであった。
勇者であるリュートの治癒魔術をもってしても、回復にそれだけの時間が掛かったのだ。
自分は本当に死ぬ寸前だったのだな、とマイラは他人事のように己の状況を振り返る。
「ねぇ、どうして私は助かったの? どうやってリュートは、私の危機を知ることができたの?」
ようやく話ができるようになったマイラは、そこでやっと気になっていた疑問をリュートに投げかける。
その当然の疑問に、リュートは涼しい顔で返した。
「マイラのくれた、ペンダントのおかげだよ」
「ペンダント……?」
「あれ、覚えてない?」
「ほら、コレ」とリュートが服の下に着けていたペンダントを引っ張り出す。それを目にした途端、マイラの喉から悲鳴のような声が飛び出した。
「それって、共鳴石の……!」
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