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――共鳴石。
同じ石から生じた破片がお互いを呼び合う性質を持っている、奇跡の結晶。
マイラがまだ、リュートと魔王討伐の旅をしていた頃の話だ。
彼女はこの共鳴石の性質を利用して、一対の呪具を作り上げたことがあった。
それを身につけた者に異変が起きた時、片割れがその異変を伝える――という特別な呪具。
そしてそれをペンダントに仕立てた若かりし頃の彼女は、「お互いに何かあったら、助けに行けるから」とか言ってリュートにそれを贈ったのであった。
――いや、重い。重すぎる。
当時の記憶がよみがえって、マイラは思わず天を仰いだ。
ペアのペンダントとか、普通に考えて付き合ってもない相手に渡すものではないだろう。しかも、特製のまじない付き。
当時の私、無敵か。若さって怖い。
ペンダントの記憶は、その頃の黒歴史を芋づる式に引っ張り出してくる。
そういえばその後に星夜祭で初めての告白に挑戦し、そしてリュートにあっさりフラれたのだった。
失恋に傷ついていた当時はその痛みを癒すことに精一杯で、今思うとペンダントの行方を気にしたこともなかった。
好きでもない相手から貰ったプレゼントなんて捨ててしまっただろうと、薄々予想はついていたし。
とはいえせっかく作ったものなので、未練がましく自分の分はずっと身に着けていたのだが。まさか。
「着けててくれたんだ……」
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