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――嬉しすぎる。
この感情を、どこへ持っていけば良いのかわからない。気持ちが昂って、爆発しそうだ。この幸せな気持ちのまま、いっそ死んでしまいたいとすら思ってしまう。
喜びが行き過ぎて混乱状態のマイラの手を握って、リュートは真剣な眼差しで言葉を続ける。
「本当に、間に合って良かった……最速で駆けつけたつもりだけど、血溜まりに倒れたマイラを目にした時はもうダメかと……。あんまり無茶はするなよ、マイラ。寿命で死ぬのは仕方ないけど、こんな唐突に君を失うのは覚悟ができてなさ過ぎる……」
「……? ……うん、ごめんね」
一瞬小さな違和感を覚えたが、リュートの真剣な表情に押し切られてマイラは素直に謝罪した。
確かに千載一遇のチャンスに浮かれていたとはいえ、軽率な行動だった。
あの状況では仕方ないと今でも考えてしまうが、反省はしているのだ。
「ホント、助けてくれてありがと、リュート。リュートを置いていかないって約束、守れて良かった」
何気なく口をついて出た言葉に、何故かリュートは驚いたように目を見開いた。
「約束って……?」
「前回リュートが酔っぱらって泣きつくからさ、約束したの。ずっと傍に居るって。置いて行ったりなんかしないって……覚えてない?」
気恥ずかしさを隠すため揶揄うような調子で言ったマイラの説明に、リュートは何故か泣き笑いの表情で「そっか」と小さく呟いた。
「うん……ありがとう、マイラ。嬉しいよ」
――その表情が、あまりに愁いに満ちていたから。
マイラはその後に続く「……本当にそうだったら良いのに」という彼の消えそうな呟きに、聞こえないフリをすることしかできなかった。
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