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「なにか……なにか私たちにできることはないの……?」
必死に縋るが、セラは悲しそうに首を横に振る。
「こればっかりは、ねぇ……。知ってのとおりヴェール熱は治癒魔術が効かないし、効果のある薬も発見されていない。もちろん貴女の魔術で体力の回復や周囲の環境の改善はできるだろうから、それだけでも三割という数字は上げられるとは思うけど。マイラがついていてあげるのが一番よ」
「そんな……」
三割が四割や五割に上がるだけでは、全然足りない。
マイラは、確実にリュートを助けたいのに。助けなければいけないのに。
唇を噛み締めて俯くマイラを見て、セラは幼子を相手にするようにしゃがみこんで彼女と視線を合わせた。
「大丈夫よ、マイラ。大丈夫。勇者さまはそんな簡単に病気に負けるような方じゃないわ。体力だって十分にあるし、なにより貴女がついてる。彼だって、大好きな貴女を置いて先に旅立てないでしょ」
「……まだ、告白受け入れてもらってない」
何故か楽しそうな顔で「あら」と、セラは口元に手を当てる。
「それなら、なおのこと死ねないわね。……もう、マイラったら……そんな顔しないで。この国の大聖女たる私が言うんだから、助かるんだって信じなさい。子供が生まれたばかりだから治療が終わったら帰るけど、明日も見にくるから」
「……うん」
これ以上はできることはないから、と促されて、手当てを終えたマイラは後ろ髪をひかれながらも寝室を後にした。
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