3 病に倒れようとも、君は

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 セラと一緒にととのえた寝室で眠るリュートの寝息は、確かに最初よりも穏やかなものになっている。  しばらくゆっくりと寝かせておいてあげた方が良いのかもしれない。  それでもリュートが心配で、マイラはソワソワと食堂の椅子に立ったり座ったりを繰り返してしまう。  呆れた顔を浮かべながらも、セラはそんなマイラの前にハーブティーを差し出した。 「あの意地っ張り、まだマイラのこと受け入れてないんだ?」  促されてコクリと一口お茶を飲む。ふわりと優しい香りが広がり、少しだけ気持ちが落ち着くのを感じた。  椅子に深く座りなおし、マイラは小さく頷く。 「……うん。六年連続で失恋記録更新中」 「六年連続ぅ⁉︎」  大袈裟なほどの悲鳴を上げた後、セラははぁ、とため息をついた。 「六年間諦めないマイラもすごいけど、マイラのことを好きなくせに毎回断り続ける勇者さまも大概よね……」 「えへへ……そう見える?」 「褒めてないし、喜ぶところじゃないから」  呆れた顔をしながらも、セラは優しい瞳でマイラを見つめる。  一緒に旅をしている頃から、年上のセラはマイラにとってお姉さんのような存在であった。セラもまた、妹のようにマイラのことを可愛がってくれている。  彼女になら他の人にも言えないような話だってできる。そんなことを思いながら、マイラはゆっくりと今年起きた出来事を彼女に打ち明けていった。
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