3 病に倒れようとも、君は

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 それからも、リュートの症状は一進一退の状態が長引いた。  熱はなかなか下がらず、せっかく食べたものを戻してしまうこともしばしば。  節々が腫れる所為で指先に力が入らず、スプーンを持つことすら儘ならない日々が続いた。  ……それでも。  リュートは諦めなかった。決して心折れなかった。  食欲がなくても、体力をつけるために必死で栄養を咀嚼(そしゃく)した。  何度床に落としても、スプーンやペンを持って指先の感覚を取り戻そうと訓練を続けた。  そして、やがて杖を使って歩けるくらいまで回復してからは、脂汗が滲むまで歯を食いしばってリハビリに臨んだ。  ――ああ、そうだ。彼はこういう頑張りができる人だった。  看病をしながら、散歩の付き添いをしながら。マイラはその姿を見守りつつ、泣きそうなくらい懐かしい感覚に浸っていた。  リュートは確かに才能に恵まれ、英雄として選ばれた人間ではあったけれど。  でも、その力の使い方を最初から身につけていた訳ではなかった。その裏には彼の並々ならぬ努力が、献身があった。  まだ年若い彼の身体に背負わせた勝手な使命、世界の命運……それでも彼は腐ることなく鍛錬を重ね、やがて魔王を討ち滅ぼす偉業を成し遂げた。  マイラはそんな彼の姿に惹かれて、恋に落ちたのだ。  そのひたむきな性格は今もなお、眩いほどにリュートを輝かせていた。
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