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こんなことを言っているが、実際のところリュートの魔力量は既にメキメキと回復してきている。体力が戻るのも、もう時間の問題だろう。
――でも、そんなことはどうだって良い。
「もう、勇者じゃなくても良いんだよ。私は、リュートが居てくれるだけで嬉しい」
「……うん、ありがと」
驚いたように少し目を見開いてから、リュートはふわりと笑む。そして、手を伸ばすとマイラの髪をくしゃりと撫でた。
「っ!」
あっという間にマイラの頬に熱が昇っていく。
――病で心細くなったのだろうか。
療養中から、いつの間にかリュートは今までにないほどにマイラとの距離を縮めていた。
ふとした瞬間に頭を撫でたり、頬に触れたり。
その優しい手つきに触れられると、それだけでマイラの胸は痛いほどに高鳴ってしまう。
……そして、そんな時の彼の眼差しと言ったら!
その視線の熱はマイラを蕩かしてしまいそうなほどに熱く、そして扇情的であった。
目を合わせただけで、マイラの身体は勝手に熱くなっていく。
そんな自分が恥ずかしくて、居た堪れない気持ちに逃げ出したくなる。
――どうして、そんな目で私を見るのだろう。
その答えを聞くこともできず、マイラは熱くなった頬を隠すように俯くことしかできない。
その熱のこもった視線に焼かれるだけで、恋心はどこまでも暴走しそうになってしまう。
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