3 病に倒れようとも、君は

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 だからマイラは何も言えなくて。ただ大人しく口を噤んで、その後に続く彼の言葉を待つ。  しばらくの間リュートは、俯き加減でそうして繋いだ手を握ったり開いたりしていた。  マイラよりふた周りくらい大きな、リュートの手。  病気の所為で少し骨ばった感触になってしまったけれど、マイラに与えてくれる安心感とドキドキはいつまでも変わらない。  やがて、リュートは覚悟を決めたようにその手をギュッと握り、口を開いた。 「君も知っての通り、僕は違う世界からやって来た。文化も違う、歴史も違う、そもそもの世界のルールさえも違う……そんな何もかもが異なる世界から」 「うん……そうだね」  何を言うつもりなのか見えぬまま、マイラは小さく頷いた。  少しだけ身体を起こすと、リュートは何気ない調子で彼女に問う。 「僕の世界も君たちの世界と同じように春夏秋冬の季節があって、一年の月日が流れて、歳を取っていく。……ねぇ、マイラ。この世界の一年って何日あるんだっけ?」 「? 四つの季節がそれぞれ三十日、全部で百二十日だけど……」  あまりに当然のその答えを聞いて、リュートは助けを求めるように繋いだ手に縋りつく。  ――リュートの躊躇いは、それほど長くはなかった。やがて覚悟を決めた顔でまっすぐにマイラに向き合った彼は、静かに告げる。 「僕の世界ではね、一年はおよそ三百六十日あるんだ。君たちは……()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」
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