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4 星降る夜を何度でも、君と
藤崎琉人は平均よりちょっと正義感が強いだけの、至って普通の少年であった。
異世界召喚がなければ、きっと元の世界で平凡な幸せを見つけて、不満を持つことなく変わり映えのしない日常を送っていたことだろう。
刺激はないけれど、穏やかな毎日――それがかつて琉人が思い描いていた、将来の姿であった。
結局その未来は、異世界の勇者に選ばれたために叶うことはなくなってしまったけれど。
(……まぁ、だからといってこの世界の人たちを恨んだりはしない)
多くの生命が危機に瀕していた彼らに、手段を選んでいる余裕などなかったのだろう。その気持ちが彼には、痛いほどに伝わってきたから。
自分にそれを救うだけの力があるのなら、それを行使せずに見捨てることなどできない――そう判断した当時の自分の選択を、琉人は今でも正しかったと思っている。
ただし、魔王討伐以外にも彼が頭を悩ませる問題が浮上することは、正直なところ予想外ではあった。……しかもまさかの、人間関係についてだ。
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