1 六年目の星夜祭

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「入らないの?」  不思議そうに問われ、ようやく理性が戻ってきたマイラは慌てて首を振った。  覚悟を決めてありったけの勇気をかき集め、キッと彼の顔を仰ぎ見る。  ……それだけで、「ああ」と、リュートは察したようになんとも言えない表情を浮かべた。  その反応の時点で、気持ちが挫けそうだ。それでも必死にその瞳を見つめ、声を振り絞った。 「勇者さま、す、好きです! どうか私と今夜、星降る夜空を見てくれませんかっ!」  頬に熱が集まって、どんどん顔が熱くなっていく。  なけなしの勇気なんて、告白の言葉を終える頃にはすっかり使い果たしていた。これ以上彼の顔を見ることができなくて、マイラはそっと視線を落とす。 「……もう、そんな時期になるのか」  途方に暮れたような、ぽつりとした独り言。そしてリュートは、疲れたようにため息をひとつ落とした。 「去年も言ったと思うけど、マイラの気持ちには応えられない。君にはもっと相応しい人がいるよ」 「勇者さまじゃなければ、意味ありません! 来年も、再来年も、その先も……勇者さまが『うん』というまで、私は絶対に諦めませんから!」  噛み付くような勢いで言い切ったその言葉に、リュートは困った顔で笑う。
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