4 星降る夜を何度でも、君と

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「と思っていたんだけど……」  と、リュートはここで一旦言葉を切った。  思いがけない情報の目白押しに固まってしまったマイラを前に、彼は困ったような顔で首を傾げる。 「その考えが、最近あることがきっかけで変わった」 「それってもしかして……私がドラゴンの巣で死にかけたこと?」  あまりの情報量に感情が振り切れてしまって、マイラの思考は逆に冷静になっていた。  彼の言う「マイラに心を奪われた」という表現や、話を続けながらも決して離そうとしない繋いだ手の感触も、今は敢えて脳内から締め出しておく。  一度でもそれを意識してしまったら、もう落ち着いて話を続けることはできなくなるだろう。  リュートは、ゆっくりと頷いた。 「……そう。僕は考えが甘かった。人は、寿命でなくても簡単に死ぬ。病気や事故や、冒険の旅路で。そのことに……気がついたんだ」  さらに、と掠れた声でリュートは言葉を続ける。 「その発見すら慢心だったということに気がついたのは、最近になってからだ。死は、他人事じゃない。僕だってそうなんだ。病気や事故で死ぬかもしれないのは、マイラと同じ。僕が君たちの死を見届けるとは、限らないんだ。そんなのは、ただの思い上がりだった」
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