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「……私もあの頃、ヴェール熱でリュートが死んじゃうんじゃないかってすごく怖かった」
その時のことを思い出しただけでも、マイラはちょっと泣きそうだ。
リュートは繋いでない方の手でぽんぽん、とその頭を優しく撫でた。
「それに気がついた時、思ったんだ。このままじゃ後悔する、って。……だから」
リュートはゆっくりと手を離すと、おもむろに居住まいを正した。びしりと背筋を伸ばし、彼は真摯な表情で切り出す。
「マイラ、君のことが好きです。今の話を聞いて嫌になったり、もう気持ちが変わったりしてるかもしれないけれど……もし良かったら僕と今夜、星降る夜を一緒に見てくれませんか」
「…………!」
思わず泣き出しそうになる衝動を抑えて、マイラは震える声で言う。
「私の方が先に老けちゃうんだよ? リュートからしたら、あっという間におばあちゃんだよ?」
「構わない。どれだけ年の差が広がっていっても、僕は君を愛し続けると約束する。君を看取る覚悟もある。……そんな日なんて、来てほしくないけど」
でも、とリュートは深呼吸をしてまっすぐに告げる。
「最後の日まで、僕はマイラと居たい」
その切なる告白を聞いて、マイラは死の淵から目覚めた時のことを思い出していた。
「寿命じゃなくて唐突に君を失うなんて、覚悟ができてない」と、口走ったリュート。
今なら、その意味がわかる。彼はずっと前から、二人の間に存在する断絶について悩んでいたのだ。
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