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――どうして。告白を断った彼が、私よりも傷ついた顔を浮かべているのだろう。
その表情の意味するところがわからなくて、マイラは左手を握り締めた。その真意はわからなくても、彼の哀しそうな笑みは確実にマイラの胸をぎゅっと締めつける。
「僕は、マイラに幸せになってほしいんだけどなぁ……」
「私の幸せは、勇者さまのそばにいることです」
きっぱりと断言しても、彼は何も言わず首を振るだけだ。その反応に、そろそろ潮時だな、と長年の経験が判断を下した。
それ以上言葉を重ねることを諦めて、マイラは手に提げたバスケットを掲げてみせる。
「わかりました、今回は引き下がることとします。祭りのご馳走を色々持ってきましたから、晩御飯をご一緒しませんか?」
「もちろん、喜んで。外は寒かっただろう? 暖炉で温まると良いよ」
あからさまな安堵の表情を浮かべ、彼はいそいそとマイラを室内へと招き入れた。
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