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それ以上言葉を重ねることを諦めて、マイラは手に提げたバスケットを掲げてみせる。
「わかりました、今回は引き下がることとします。祭りのご馳走を色々持ってきましたから、晩御飯をご一緒しませんか?」
「もちろん、喜んで。外は寒かっただろう? 暖炉で温まると良いよ」
あからさまな安堵の表情を浮かべ、彼はいそいそとマイラを室内へと招き入れる。
(ああ、やっぱり今回もダメだったなぁ……)
屋敷へと足を踏み入れながら、マイラはこっそりと嘆息した。
もう何度も繰り返した、このやりとり。すでにその内容は、断られることまで含めてお約束のようになってしまっている。
――これで通算六回目の惨敗。それでも告白することにもフラれることにも、マイラは未だに慣れることはない。
(だけど……いつかきっと、振り向かせてみせる)
屋敷の中へと先導する彼の背中を見つめながら。フラれたばかりの失恋の痛みを胸に、挫けることのない決意を固くしていたのであった。
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