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「何考えてるの、マイラ?」
声をかけられて、思い出に浸っていたマイラの意識がはっと戻った。
「勇者さまと出会った時のことを、思い出していました」
「へえ?」
にっこりと笑んで、リュートは温かなココアの入ったマグカップを差し出す。
マイラの好きな、甘さ控えめで少しだけハチミツの入ったココア。
――覚えてくれたんだ、とそれだけでマイラの口元が緩む。
しかしマイラの喜びをよそに、そこで彼は涼しい顔で大きな爆弾を落とした。
「出会ったばかりというと……顔を合わせた途端、勝負を挑んできた小さな女の子の話?」
「っ! あれは本当に、若気の至りで……! 今は本当に反省してますから、あの時のことはもう……」
六年前の当時、十二歳だったマイラは『最年少にして最高峰の天才魔導師』なんて今振り返れば恥ずかしい称号をほしいままにしていた。
そうして狭い世界でプライドばかり大きく育ってしまった彼女はその時、出会ったばかりの彼に魔術勝負を挑み……そして、あっさりと負けたのである。
黒歴史を掘り返されて、恥ずかしさのあまりマイラの顔には血が昇っていく。それなのに、「まあまあ」と彼は心底楽しそうな顔で言葉を続ける。
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