1 六年目の星夜祭

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「あの時召喚されたばかりの僕は、どこへ行っても救世主さまって拝まれてばかりでさ……丁寧なもてなしは受けられたけど、誰もが僕を遠巻きにするばかりで孤独感に苛まれていたんだ。だから、君の飾らない乱暴な歓待が嬉しかったんだよ。あれがきっかけで仲間との距離も縮まったし、あの時の君の気遣いは本当に冴えていた」 「十二の小娘が、そんなこと考えていた訳ないでしょう……」  もうこれ以上は勘弁してくれと、マイラは強引に話題を転換することにした。 「仲間といえば……、他の皆さんには最近、会いました?」 「会ってないなぁ。ここに前回人が来たのは、夏に君が素材採集のついでに寄ってくれた時だよ。こんな辺鄙(へんぴ)な場所まで来るのは、君くらいさ」 「皆さん、お忙しい立場ですもんねぇ……私も直接お会いした訳ではないですけど、剣聖のジルさまは最近子供が産まれたそうですよ。騎士団長の仕事を放り出して、あかちゃんにメロメロだって噂です」 「へぇ、あの無愛想で鉄面皮だったジルが?」 「まぁ聖女セラさまと結婚される頃から、そのキャラ崩れ始めてましたけどね。セラさまもそんな訳で、今は各地の慰問を控えて王都にいらっしゃるみたいですよ。フェリル皇子は王位を継ぐためにあちこち飛び回って実績を積み上げてるようですし……暇なのは、私だけかも」
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