交渉

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 ラクシュリーナは、唇をとがらせたまま談話室を後にした。  塔の上にある自室を目指す。くるくると螺旋になっている階段を上っていく。  ラクシュリーナは、けしてここに幽閉されているわけではない。塔の外には自由に出られるし、公務があれば向こうに足を運ぶときだってある。  ラクシュリーナが離塔で暮らしているのは、国王でもある父親から嫌われているからだ。  十年前の流行病で王妃が命を失ったのは、ラクシュリーナが彼女にその病をうつしたためだった。幼いラクシュリーナを、母親である王妃は、根をつめて看病した。ラクシュリーナは子どもで体力もあり、母親の看病のおかげで回復した。  しかし、病をうつされた王妃は違った。たくさんの人々の命の灯火が消えていく中、王妃の命も尽きた。あの病から回復した者は、百人に一人いるかいないかと言われているくらいだ。特効薬もなく、かかったら最後。待っているのは死のみ。  国王は、王妃を愛していた。その命を奪ったのはラクシュリーナだと思っている。  王妃の葬儀が終わったあと、国王はラクシュリーナに言ったのだ。  ――当分、お前の顔は見たくない。
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