出会

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 ウラグス大陸の北に位置するアイスエーグル国は、一年の三分の一が雪で覆われる国である。冬に十分な雪が降らなければ、春から夏にかけて周囲が水不足に陥ってしまうため、アイスエーグル国は水瓶の国とも呼ばれていた。  昔から、北にあるコミル山に三度雪が降れば、平地にも雪が下りてくると伝えられている。こういった言い伝えとは、不思議と当たるもの。  さらに雪が降ると、王城の空を何体もの氷龍が嬉しそうに飛び回る。氷龍はアイスエーグル国の象徴とも言われている存在であり、氷龍の力のおかげで、寒さが厳しいこの地方でも生活は豊かであった。  氷龍はその名の通り氷の龍である。身体の色は氷のように透明で、飛翔する姿も天気によっては見えたり見えなかったりする。  人々は氷龍を心から敬愛しており、氷龍の像を各地に建てて奉っている。年明けには、氷龍とともに新しい年の門出を祝うお祭りも開かれていた。  ウラグス大陸には、氷龍のアイスエーグル国のほか、火龍のフレイムシアン国、風龍のウィンドセリー国、土龍のソイルバエ国の四つの国があり、それぞれの国が象徴とする龍の加護を受けている。  今日は、朝から静かに雪が降っていた。
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