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ラクシュリーナは白磁のカップに手を伸ばす。この国の紅茶は、身体があたたまるようにと香辛料の強いものが多い。カップを唇に近づけると、香辛料の独特のにおいがした。一口飲むと、ひりっとした刺激が喉元を通り過ぎていく。
「……ケホッ」
あまりにもの刺激の強さにむせてしまった。
「あら、ラクシュリーナ、大丈夫? そんなに強くはないものだと思っていたのだけれど」
「え、えぇ……」
ラクシュリーナには飲み慣れていないだけ。離塔で飲む紅茶は、香辛料を控えてある。
オーレリアにけして悪気があったわけではない。彼女は心配そうにラクシュリーナの背をさする。
「それで、お姉様……。今日は、どういった話を? 龍魔石についてが本題ではありませんよね?」
涙目でラクシュリーナが尋ねると、オーレリアはぱちぱちと素早く瞬きをした。
「そうね」
オーレリアもカップに手を伸ばし、お茶を飲む。その一連の動作を思わず目で追ってしまった。上下する喉元をじっと見つめる。何か言いにくいことを言いたそうな、やはり言いにくそうな、そんな雰囲気である。
彼女は何事もなくカップを戻した。
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