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一歩踏み出した右足が、前にツルリと滑った。そのまま後ろに尻餅をつきそうになったところを、エセルバードがすかさず手を伸ばして支える。
「姫様。お怪我はありませんか?」
薄暗くても、目の前にエセルバードの顔があるのがわかる。心配そうにのぞき込みながら声をかけてきた瞬間に、白い息が顔に触れた。
「姫様、ご無事ですか?」
サライアスもくるりと振り返る。
「エセル。よくやった」
「エセル、ありがとう。もう、大丈夫よ」
いくら相手がエセルバードであっても、この姿を見られるのは恥ずかしい。ラクシュリーナは身体のすべてを小さな彼に預けている。
「お怪我がなさそうで、安心いたしました」
エセルバードがラクシュリーナの身体を起こし、彼女も地面にしっかりと足をつけた。
「姫様。もう少しですが、歩くことはできますか?」
サライアスも心配そうに見つめてくる。ランタンの光をラクシュリーナの前に差し出し、表情をしっかりと確認してきた。
「お顔が赤いようですが、もしかして疲れましたか?」
「だ、大丈夫よ……。そのランタンの明かりの加減ではなくて?」
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