成長

3/7

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
 小さな子どもだと思っていたエセルバードの身体が、思っていたよりもしっかりとしていた。 「姫様、私が背負いますか?」  いきなりサライアスが背中を向けてしゃがみ込む。 「だから。わたくしはもう子どもじゃないの。きちんと歩けます」  ちょっとだけ声を荒らげると、ふっと鼻で笑いながらサライアスが立ち上がった。 「いたずらが過ぎましたね。では、気をつけて歩いてください」 「義父上、姫様がまた転びそうになったら、ボクが支えますから」 「頼もしい息子で誇らしいよ」 「もう」  サライアスとエセルバードのやりとりに、頬を太らせた。  これでは意地でも転んではいられない。  ラクシュリーナは一歩一歩、ゆっくりと雪道を歩く。その結果、なんとか離塔まで足を滑らせずに歩くことができた。  離塔のエントランスでは、すぐさまカーラが出迎える。 「あらあら姫様。お顔が赤いですよ。お外は寒かったですよね。どうぞ、火の側に」  明々と燃える暖炉前にある長椅子に、ラクシュリーナは腰を落ち着ける。  カーラにも指摘された頬を、両手で包み込む。先ほども顔が赤くなっていたのは、ランタンの明かりのせいではなかったのだ。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加