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ラクシュリーナがサライアスの後ろにいたエセルバードに声をかけたのは、彼が少しだけ表情を曇らせていたからだ。
「ボク、医者を呼んできます」
「エセル。今夜は動くな。こういう日は、医者がこちらまで来るのも危険だ。外は暗くて滑るからな。動かない決断をすることも大事なときもある。明日の朝一、医者を呼ぶ」
「では、氷嚢を持ってきます」
途中までついてきたエセルバードは、くるりと振り返ってまた階段を下りていく。その後ろ姿を、つい目で追ってしまう。
「姫様、どうかされましたか?」
「いえ……子どもの成長は、早いと思ったの」
「そうですね。特にエセルは同年代の子よりも、成長が早いように思えます。あと十年も経てば、立派な騎士になりますよ」
「そう、そのときが楽しみね」
頭がぼぅっとしてきて、考えるのもしゃべるのも辛くなってきた。ふわふわと身体が浮いたような心地で、部屋まで連れて行かれ、そのまま寝台に横たえられた。
「すぐにカーラがきますから。姫様はゆっくりとお休みください。今日は寒かったですからね。身体がついていかなかったのでしょう」
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