葛藤

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 エセルバードはゼクスの孫と思われていたが、正確にはそれも異なる。サライアスには本当のことを伝えたが「何も問題ない」と一蹴された。  ゼクスは龍魔石回収人であった。氷龍が飛び立ったあとの龍の間に、ぽつんといた赤ん坊がエセルバードなのだ。氷龍がどこかから連れてきたのだろう。たまに、氷龍が何かを捕まえて戻ってくることもあるからだ。  産着に名前が刺繍してあったため、ゼクスはそのままの名をエセルバードにつけたと言っていた。  ゼクスもまた、流行病で家族を失った者だった。寂しかったのだろう。そこにいた赤ん坊をこっそりと連れ帰り、自分の孫とした。孤児院から引き取ったように見せかければ、なんら問題はなかった。  それからしばらくは、王城の住居棟でゼクスとともに暮らしていた。ゼクスが仕事で不在のときは、手の空いている誰かがエセルバードの世話をする。あそこは、それぞれが助け合って生きるような、そんな場所でもあった。
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