出会

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 控えの間にいる近衛騎士、サライアス・オルコットに声をかけた。彼はラクシュリーナから見たら、父親に近い年代である。赤茶の髪を短く刈り、茶色の瞳も力強い。身体も大きく、ラクシュリーナは彼と話すために見上げる必要がある。近衛騎士としてこれほど心強い者もいないだろう。  そんな彼が未だに独身であるのは、十年前に婚約者を失ったからだと聞いている。十年前、アイスエーグル国には質の悪い流行病が蔓延したのだ。彼は、十年経った今でもその婚約者を忘れられずにいるらしい。一途といえば聞こえはいいが、未練がましい、女々しいという声も聞こえてくる。  そういった理由もあって、彼はラクシュリーナの近衛騎士隊長を命じられた。彼はすぐにラクシュリーナの側へとやってきた。 「はい。ですが、外は雪が降っておりますので、あたたかな格好でお願いします」 「もう。わたくし、子どもじゃないのよ」
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