葛藤

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 殴る、蹴る、髪を引っ張られる。そして雪が降ったあの日は、雪玉をこれほどかというくらい、ぶつけられていた。遊びに誘う振りをしてエセルバードを外に誘い出し、行っていたのはそういったいじめのようなもの。  そこで出会ったのがラクシュリーナである。  命令だから立ちなさいと言った彼女は、息をするのを忘れるくらい美しかった。そして、騎士にならないかと声をかけてくれた。正確には、騎士の弟子であるが。  サライアスも困った様子ではあったが、エセルバードが意思を伝えると、快く迎え入れてくれた。それはゼクスの孫という肩書きがあったからのようだ。  それでもあの日を境目に、エセルバードの人生が大きく変化したのは言うまでもない。  体格にもめぐまれ、同年代の子どもたちよりも頭半分だけ大きくなった。だが、成長期はこれからであるため、まだまだ大きくなるだろうと、サライアスは楽しそうに笑っていた。  今は、サライアスの名を借りるような形で、ラクシュリーナの側にいるのを許されている。できることならば、エセルバードとして、彼女の側にいる権利を得たい。
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