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十歳も年上の彼女は、たまに自分より幼い仕草を見せてくる。それを指摘すると「エセルが大人になったのよ」と言い返してくるのだが、エセルバードにはそういった自覚もない。ただラクシュリーナに認めてもらいたいのと、サライアスの名に泥を塗らないような行動を意識しているだけなのだ。
「エセル、姫様の具合はどうだ?」
食事を手にしたサライアスが、控えの間に入ってきた。
「はい。熱は高いのですが、おやすみになられていたので、まだ薬は飲んでおりません」
「……そうか。では、時期をみて飲ませなければならないな」
その言葉に、エセルバードも頷いた。あまりに高熱が続くのは、心配である。十数年前に猛威を振るった流行病の話を思い出してしまう。
「食事をもらってきた。食べなさい」
「はい。ありがとうございます」
エセルバードは小さなテーブルに、サライアスと向かい合って座った。
「まるで、あのときのようだ……」
ぽつりとサライアスが言葉をこぼし、エセルバードはパンをちぎっていた手を止めた。
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