葛藤

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 つかえそうになりながらも、エセルバードはなんとかパンを飲み込んだ。あたたかなシチューをすくい、口の中を満たす。  たった一人の家族だったゼクスを失っても、人間はいつか死ぬものだと、どこか割り切っていた。子どもらしくないと言われればそうなのだが、それが自分の心を守る手段の一つでもあったのだ。  サライアスは何もしゃべらなかった。もともと口数の多い人間ではなく、寡黙な男である。エセルバードも子どもらしくない子どもであるため、なんだかんだで似たような父子となってしまったのだ。 「……姫様は、大丈夫ですよね?」  ぐるぐるといろんなことを考えていると、どうしても最悪の事態を想像してしまう。  ラクシュリーナがいなくなったらと考えたら、胸が痛んだ。彼女のために騎士になると決意し、彼女を守ると心に決めた。それが、あの日からエセルバードにとっての生きる意味となったのだ。 「あぁ、大丈夫だ。姫様だからな。姫様が目を覚ましたら、薬を飲ませなければならないが。姫様のことだから、嫌がりそうだな……」  サライアスの言葉にエセルバードも同意した。
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