暗転

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 次の春から、エセルバードは本城の側にある学校へと通う予定である。それもあって、最近は身体を鍛えるよりも、知識をつけることを優先とされていた。読み書きはもちろん、計算も。そして、この国の歴史は近隣国との政治関係まで。これから学校で学ぶであろうことを、先に知識として蓄えておけとのことらしい。  こうやって勉強するときも、離塔ではラクシュリーナの控えの間を使わせてもらっている。護衛する対象は外に出てしまったため、ここに控えている者は誰もいない。  エセルバード、一人きり。  外はしんしんと雪が降り続いている。厚みのある灰鼠の雲の隙間から、ときどき太陽のうっすらとした形が見えるが、その雲を吹き飛ばすほどの力はないようだ。外は少しだけ明るくなったり、また暗くなったりと、不安定な天気が続いている。  本城と離塔をつなぐ通路は、しっかりと雪かきをしているが、これだけ雪が降ればすぐに積もってしまう。  彼女のことだから、また通路で転ばれては大変だ。なによりも、今日はエセルバードが一緒にいない。転んでも助けてあげられない。
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