出会

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 二人のやりとりを、やわらかな眼差しで見守っているのが、侍女のカーラである。彼女はラクシュリーナの母親よりもずっと上の年代で、サライアスすら子どものように扱ってしまう。何事もおおらかに包み込むような、おっとりとした女性だ。彼女もまた、十年前の流行病で娘夫婦を失っている。  カーラはラクシュリーナに兎の毛皮のコートを羽織らせた。この兎はアイスエーグル国で皮用に養殖されているものである。寒さが厳しい国ならではの産業ともいえよう。  ラクシュリーナは、白藍の髪を結わえずにおろすようにと、カーラに命じた。寒い日は髪をおろすと、首元があたたかい。  カーラとサライアスを従え、外に出る。雪の降り始めの季節だからか、それほど寒くはなかった。  一面の月白色の世界に、ラクシュリーナは紫紺の目を細くする。太陽は出ていないが、雪の色はまぶしい。さくりさくりと雪を踏みしめ、子どもたちの側に近づく。 「あなたたち、楽しそうね。いったい、何をしているのかしら? 「げ、姫様」 「人の顔を見て、げって、失礼じゃないの」 「え? いや、あっ。ははっ、わ~、逃げろ~」
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