暗転

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「義父上、お茶でも飲まれますか? 外は冷えましたよね。これでもボク、姫様にお茶を淹れるのが上手になったと褒められたのです」 「そうか、では頼もうか。できれば、香辛料の強めのものをお願いしたい」  子どもらしく振る舞うときと、大人っぽく振る舞うときと。状況に応じて使い分ける術を、エセルバードは身に付けていた。  いつも食事で使用している小さなテーブルの上に、一人分のお茶を置いた。サライアスが希望したお茶は、エセルバードが飲むには刺激の強いものだ。 「あぁ、美味いな」  染み入るような声でつぶやく姿も、いつものサライアスと何かが異なる。  彼に問いたい気持ちを、エセルバードはぐっと耐えた。落ち着けば、サライアスのほうから伝えてくれるだろう。それがエセルバードにとっても必要なことであれば、なおのこと。  深く息を吐きながらも、サライアスはお茶を味わっていた。  その様子をじっと見つめ、言葉が出てくるの待つ。  コトリとカップがテーブルの上に戻った。中身は空っぽ。 「氷龍の龍魔石が減っている話は知っているだろう?」 「はい」 「その原因がわかったんだ」
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