離別

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離別

 エセルバードは立ち上がり、ラクシュリーナの部屋へと向かう。この行為が許されるわけではないと理解はしているが、身体が勝手に動いた。サライアスが背中から何か声をかけてきたようだが、その言葉は耳には届かない。 「ラクシュリーナ様っ!」 「あら、エセル。どうかしたの?」  突然、部屋に入ってきたエセルバードの姿を見て、彼女は穏やかに微笑んだ。それでも、目の縁が赤いようにも見える。  もしかして、一人で泣いていたのだろうか。  彼女の座っている長椅子に、かつかつと近づき、その顔を見下ろした。 「姫様、泣いていたのですか?」 「……サライアスから、聞いたのね?」  座りなさいと、彼女は隣をぽんぽんと叩く。  その言葉に従い、すっと腰をおろしたエセルバードは、すぐさま彼女に問いただす。 「それで。本当なのですか? これから氷河時代がやってくること。氷龍とともに眠りにつくこと」 「そうね。そういったことが過去にはあったということよ」  艶やかな唇が、ゆっくりと言葉を紡いだ。 「姫様は、それでいいのですか?」 「どういうこと?」 「国のために、姫様だけが犠牲になっていいのですか?」
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