離別

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 ラクシュリーナの手が伸びてきて、エセルバードの髪をやさしく梳く。 「あなたの髪は、春のような色よね……。この大陸が永遠に雪に閉ざされたら、たくさんの人が亡くなるでしょう」  彼女の手が、エセルバードの頭を引き寄せた。こつんと額に彼女の肩が触れる。 「姉様もフレイムシアンに嫁ぐ。姉様は好きな人がいるけれども、国のために縁談を受け入れたの。だからわたくしも、王族としての義務を果たしたい」 「だからって、なぜ姫様なのですか?」  彼女の肩に額を押しつけたまま、エセルバードはくぐもった声で尋ねた。 「お父様とお兄様は、残された民を率いていく必要がある。姉様はフレイムシアンに嫁ぐ。姉様が嫁ぐことで、アイスエーグルはフレイムシアンの援助を受けられる。そうなると、わたくしが適任なのよ」 「それでも……」  何か他に方法はなかったのか。 「わたくしが流行病にかかったとき、お母様はうつるかもしれないのに、ずっとわたくしの看病をしてくださった。今なら、あのときのお母様の気持ちがなんとなくわかるような気がするの」  ラクシュリーナがエセルバードを抱き寄せた。
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