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「わたくしはきっと、あなたに生きてもらいたいのよ……」
頬を涙がつたった。
彼女もエセルバードが泣いているのに気づいたようだが、静かに背をなでるだけ。
「わたくしね、この部屋から氷龍が空を舞うのを見るのが好きなの。雪を照らす朝日のなか、氷龍が何体も連なって空を飛んでいるの。本当に、綺麗よ。彼らは、氷龍であることに誇りを持っている。そして、このアイスエーグルの民を守ってくれている。その彼らの命が尽きようとしているのであれば、それを見守るのも王族の義務であると、そう思ったのよ。わたくしは氷龍とともに生きる――」
それがラクシュリーナの決意なのだ。
「それにね。氷龍とともに眠りにつくといっても、死ぬわけではないらしいのよ」
「え?」
驚いたエセルバードはおもわず顔をあげた。
「もう、エセルったら」
ラクシュリーナは手巾を取り出し、彼の涙を拭う。
「氷龍と一緒に眠るだけ。氷龍の力が回復し、また飛翔できるようになれば、ともに眠りについた者も目覚めると。そう文献にはあるみたいだから」
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