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今まで雪遊びをしていた子どもたちは、蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。残ったのは、踏み荒らされた雪と一人の男の子。
「見かけない子ね」
ラクシュリーナは雪の上にうずくまる男の子を見下ろした。
「ああ、この子はゼクスのところにいた子ですね。ゼクスが亡くなったあと、こちらで仕事を与えた聞きました。今は、マルクが世話を焼いています」
ゼクスとは数年前まで王城で使用人として働いていた男だ。年齢を理由に辞め、家族のもとに戻ったと聞いていたが。
「え? ゼクス、亡くなったの? この子はゼクスの孫ってこと?」
カーラから聞いた話は、ラクシュリーナにとっては初耳だった。
かつての使用人がどうなったかだなんて、いちいち情報は入ってこない。カーラもわざとそういった情報を聞かせようとはしなかったのだろう。ラクシュリーナの立場を考えれば、仕方のないことかもしれない。
「まあ、いいわ。それよりもあなた。立ちなさい、立てるでしょう」
その声に、男の子はピクッと反応した。
「立ちなさい、これは命令よ」
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