エピローグ

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「そのようですね。そうやって、自分のことよりも氷龍を気にされるところは、昔から変わっておりませんね」  そう言われても、ラクシュリーナが眠りについたのは、つい昨日のように感じる。だから二十年と言われてもピンとこない。 「あの……あなたは……?」  尋ねると、青年はにっこりと微笑んだ。  その笑顔を見ると、胸がぎゅっと痛んだ。この笑顔を知っている。 「俺は、エセルバード・オルコット。このたび、ラクシュリーナ様の近衛騎士隊長に任命されました」 「エセル……」 「はい、エセルです」 「うそ……」 「うそではありません。あれから二十年が経っているのです。俺も二十九歳になりました。約束通り、姫様を守る騎士となりました」 「うそ……」  目頭が熱い。  「おはようございます、姫様」  それはいつも彼と食堂で交わす挨拶だったはず。 「おはよう、エセル……」 「身体を起こしますか?」 「そ、そうね」  こうやって、見下ろされているのは少し恥ずかしい。身じろいでから起きようとすると、彼の手が背中を支えてくれた。小さくて幼かった手は、大きく太くて大人の手になっている。 「本当にエセルなの?」
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