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「えぇ。義父はサライアス・オルコットです。俺を養子にしてくれました。今は引退して、田舎に引っ込んでおります」
「そう……」
「信じられないようですね。姫様が雪道で転びそうになったのを助けたのは俺です。そのあと、高熱を出されたので心配しましたよ」
それは眠りにつくほんの数ヶ月前の出来事。
「やっぱり、エセルなのね」
「はい……信じられないかもしれませんが……」
「えぇ。まだ実感がわかない。あれから二十年ということは、わたくしも三十九歳? よかったわ、まだおばあちゃんにはなっていない……」
「違いますよ」
違うわけがない。ラクシュリーナが眠りについたのは十九歳の年だった。それから二十年が経てば、三十九歳になる。そのくらいの計算は、ラクシュリーナだって簡単にわかる。
「ラクシュリーナ様は十九歳のお姿のままです。氷で閉ざされた王城の中では、時間が止まっていたようですね」
彼はまた、信じられないようなことをさらっと口にする。
「その辺はおいおいと説明いたしましょう」
それよりも、と彼は言葉を続ける。
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