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「ラクシュリーナ様には、アイスエーグル国の女王となっていただきたいのです。正当なる王族の地を引くあなたであれば、誰よりもそれに相応しい」
「女王……?」
ラクシュリーナは紫紺の瞳を大きく見開いて、首を傾げた。
「お兄様がいらっしゃるでしょう? 王は、お兄様ではなくて?」
二十年経っているとしたら、父親は六十歳になっただろうか。それでも兄たちは四十代だろう。
「あれから二十年の間に何が起こったのか、説明せねばなりませんね」
キュゥキュゥキュゥ――。
一体の氷龍が飛び立った。残りの氷龍もそれに続こうとしている。
「それに、俺がどれだけあなたを想っていたのかも……。たった三年間でしたが、あなたを好きになるには十分な時間でした。俺は、あなたを愛して生きる喜びを知ったのです。だからずっと、あなたの目覚めを信じていました」
目の前の天鷲絨の瞳が、はかなげに揺れていた。
「その責任を取っていただけませんか?」
ラクシュリーナの心臓が、トクンと震えた。胸の奥がざわざわと音を立てている。
この気持ちをなんと呼ぶのか――。
ラクシュリーナにはまだわからない。
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