24人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
観念したかのように、彼はすっと立ち上がる。力強い天鷲絨の瞳は、ラクシュリーナをじっと見上げている。
「わたくしはラクシュリーナ、十六歳よ。あなた、お名前と年齢は?」
天鷲絨の瞳がやわらかく揺れた。
「エセルバード、六歳」
「まあ、お利口ね。だけど、あなたの素敵な髪が濡れているわ。珍しい色ね。春に咲き誇るたんぽぽみたいな色。春の色だわ」
ラクシュリーナはサライアスの髪に触れる。
「あ、濡れているのは髪だけじゃないわね。全身、びしょ濡れよ。カーラ、この子を浴室に案内して」
「姫様。使用人の子を勝手にそのようにしては……」
「大丈夫よ。ね、サライアス」
ラクシュリーナがサライアスを見上げると、彼は少しだけ身体を引いた。
「サライアスは結婚する気がないのでしょう? だから、この子を弟子にしたらどうかしら?」
「姫様の話が飛躍しすぎていて、私には理解できません」
最初のコメントを投稿しよう!