1:A定食、待ち合わせ

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「授業中に考え事ですか……私の授業中に考え事ですかっ!」 「すみません……」 生物の授業中だ。丸いなんらかの模型を持ったままの、若い女の先生(なんと毎日必ず服装が違う)が、こちらをにらんでいた。どっと周囲が笑う。ぼくはぼんやりした気分が抜けない。しっかりしてくださいね、と言われて、はいと答えると、授業が再開した。 放課後になって、下駄箱から靴を取りだして、帰ろうとしていると、クラスメイトの──なんとかって名前の……ええと、とりあえず男子生徒が、声をかけてきた。 スポーツ苅りという感じの瞳が大きい、小柄な生徒だった。 「……なんだよ」 さっさと帰りたいのに。 少しだるい気分で問う。そいつは嬉しそうな顔をした。だいたい聞かれることはわかるが。 「──お前、さっきの授業中、なに考えてたんだ?」 ああ。 興味津々に、聞かれた。 ぼくは早く帰りたかったので、適当に答える。 「きれいなサンマの食べ方」 「あいつらって言ったじゃんか」 ……適当過ぎたか。スルーされた。近くにいた、他に同じように帰ろうとしていた生徒が、聞き耳を立て始めた。 「……あいつらの食べ方」  適当に答えて、出ていこうとしたら、あいつらってなんだよ! とまた食い付かれた。面白そうににやにやしている。 ……なにがしたいんだ。 授業中にサンマの食べ方なんて考えない、という推理か? うーむ。 「お前『あいつらか』って言ったじゃんか。お前がぼけっとしてるのは珍しくないけど、授業中に上の空で独り言って!」  にやにやしながら聞かれた。なにが楽しいのだろう。近くにいた数人も、そうだそうだと謎の加勢をしていた。謎の奇声を発しているやつもいた。  だが、ちょうど近くに、さっぱりしていて人気のある、黒髪の美人先生が通りすぎた瞬間に、ぼくから視線が逸れたので、さっさと外に出る。 いや、それにしても。 「……そんなに、ぼけっとしてるか?」 不思議なことを言われるものだった。
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