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2.BOOK、日付
「──うん、そう。後任、またはサポートになり得るか。自覚はしてたけど、適応力が、落ちてきたみたいだからね……」
記憶を失いやすく、同じように取り戻しやすくなったのだ、とまつりは言った。波があるのは、良くないらしい。
ありすぎる候補のひとつ、一番近くにある図書館に向かって、ぼくらは歩いていた。まつりは薄手の黒いコートを着ている。最近気に入っているらしい。
日付は便箋の下の方に書いてあったらしいがぼくは読んでいなかったので、気付かなかった。
「……で、お前はぼくに任せたくないって、ことか?」
歩きながらぼくは、先月の事件で、まつりが受けた『賭け』についてを聞いた。この事件は、特殊で、最初から終わっていて、むしろそれを利用しているようなものだった。
……事件というのも、簡単にいえば、ある日『恩人だった人』を殺されてしまったと知るAさんが《その犯人》の(Bさん)を殺して成り代わり、その人の持ち物を付けて生きていたというのが始まりの話だ。
ぼくは、その間に、少し軟禁されている。
──そして、そのBさん(Aさん)を、本人だと思って、殺した別の女性が、今度はBさんとして生きていた話だ。
なおかつ、Aさんが殺して成り代わったはずのBさんだが、実は生きていたため、Bさんが、本物と偽物で合わせて二人。
まつりがその辺りのことで、何か細工をしていたようだが……改めて考えると、ぼくもわけがわからないことばかりだ。
全てわかる、と言えば、嘘になるのだろうから、それでいいのかもしれない。
──Bさん(偽物、Aさん)は、Bさんにとっての本当の娘のいる、しかし自分の家に帰ったものの、いろいろと思うところがあったのだろうか、家庭に耐えられなくなった。
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