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──以下略。
まあこんなところだろうか。そんな感じの話を、まつりはぼくに解かせようとしたのだ。
少しみっともなく言い訳をするなら、これに関しても、完全にこうだ、と言い切れるわけではない。まつりが何をしたのかもよくは知らない。ぼくはただの学生だし名探偵ではない……なんて、実も蓋もないかな。ごめんなさい……
「ん……」
頭で回想をしていたら、意識が跳んでいたらしい。気配に気付いて、ようやく我に返る。さっきから何か答えてもらっていたらしいが──そういえば聞いていなかったな。
懲りずに顔に右手を添えられていた。試しにあえて、動かずそのまま目を伏せてみる。
乗ってみると、どう反応するのだろうと、なんとなく思ったのだ。いざとなれば避けられる自信もあったが。
まあ、しかしだいぶん、こいつになら少し前から接触に慣れていたし、それなら特にこれといって意識するような感情がないため、実はこの辺わりと、どうでも良かったりもする。
なんか反応がめんどくさいと思っていたのは確かだが、抵抗も同じくらい、だるかったりして。
「……む、なんか、つまんないなー」
せっかく動かなかったというのに、やっぱり不満そうで、そのままぺしぺし頬を叩かれた。うーん……ぼくになにを求めたいのかわからない。誰もいないそこそこの田舎町とはいえ、お外だしねー、と言われた。いろいろと感性がずれまくっているが、どうやら、その辺のモラルくらいはあるらしい。
「ぼんやりしてるよ、大丈夫?」
最後に左頬をつねってから手を離し、まつりは首を傾げずに聞いた。わりと真剣に。
「ああ、悪い。ちょっとな……で、ぼくはどうって?」
「及第点ー。まあ、夏々都が、バカにされてても、それはそれで知らないんだけどさ……『自分で考えなきゃ出来ないのか』って言われたらやるよね」
及第点。
軽口はこの際、聞き流すが、ぼくは一応合格したらしい。
「ふうん……で、お前は、ことあるごとに一体何をしたいんだ?」
「……んー、知りたいことがあって。情調、っていうのかな、特定の情動? ──なんか、こう、よく、わからないんだよねー。人が悶えたりするのを、つついて見ているのは、楽しいんだけどさ」
「楽しいのかよ」
「うん、でもそれも自分には切り離された感覚みたいで、仕組みがね──本当には理解出来なくて」
それを理解することが、こいつにどういう意味をもたらすのかはわからなかったが、あえてぼくは聞かなかった。話を変えた。
ウインドウがあちこち開きっぱなしみたいなやつなので、いきなり話が変わったところで、そんなに大して気にすることではなかった。この辺りの対応力は、会話の上で楽だなあと思う。
「──で、ぼくはお前の後任かサポートに正式につかせることになるのか?」
なるべくさりげなく聞くとまつりは、微妙そうに笑った。あまり気が進まないようだった。
「んー、そこだよね、そうなるなら、あっちについても良かった気がしてさ、妬けるんだよ……」
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